予想以上に早い帰りに、篁くんと話していたことも忘れ、ぎゅっと握り拳をつくる。

何をどう伝えたらいいのか、まだ分からずにいる。

でも、帰ってきたからには話さないといけない。

再び顔を出す憂鬱な気持ちにうつむく……と。


「……ん」

私の目の前に、篁くんの顔。

腰を屈めて、まるで私に顔を差し出しているみたい。


「なに……?」

「一発殴る練習しとくかなって」

「は……」


問いかけて返ってきた言葉に、私は目をパチパチとさせる。

殴る練習……って。


「……ふ、ははっ……殴られたいの?」


私は思いもしない篁くんの行動に笑いながら、ぺちんと優しく彼の頰に手を当てた。


「ありがとう……」


何故だか分からない。
だけど、触れたところから温もりが伝わってきて、安心する。


「思ってることを話せばいいだけ……だよね」


小さく呟いた私の言葉に、篁くんは頷く。そして、


「頑張れ」


もう一度、私に微笑んでくれた。