「この際だから言っとくけど、そもそも近付いてきた女子達と何もしてないし」
「え……?」
「カラオケとか、買い物とかに付き合ったことはあるけど、それだけ」
思いがけないカミングアウトに、私は篁くんを見る。
それは……つまり、女の子達と噂になっているようなことはしていない……ってこと?
いや、でも……。
「だったら、何で……あんな噂が広まるの?」
篁くんに近付いた女の子達は、みんな揃ってそういうことをしたいう趣旨のことを話していた。それなのに……。
「誰かが始めに言い出して、それからみんな便乗して言い出したんだよ。詳しくは分からねーけど、自分は相手にしてもらえなかったとか言えなくて、嘘が嘘を呼んでったんじゃん?」
な、なるほど……。
嫉妬心や独占欲が強い女子のこと。きっと自分だけ何もされなかったなんて言えなくて、嘘をついてしまった。
篁くんの言いたいことは分かる。
「でも、私も見たよ。卒業式の日、篁くんが会長と……その、キスしてるの」
「それ、本当にしてた? フリだけじゃね?」
「……」
言われてみて、思い出してみて、固まる。
確かに、唇と唇は重なっていなかった。



