お互い無言のまま、足だけを進める。

これだと、あっという間に家まで着いちゃうな……なんて、何故だか分からないけどしんみりして。


「あ、そこの角を右に曲がったらすぐだから……」

実際、もう家に着く直前という所まで、いつの間にか来てしまった。


「ああ」と小さく返事して、足を止める篁くん。

少し引き延ばした時間も、ここで終わり。


「あの……」

『ありがとう』と、お礼を言おうとした……その時。


「話しやすくなったんだとしたら、多分……高宮に対する気持ちが変わったから」

「え……?」


真っ直ぐ、私を見つめる篁くん。

あまりに真剣なその表情に、ドクンと胸の奥が跳ねる。


「初めはバカでムカつく女だと思ってたけど、今は……」


上手く息も出来ない。

ただ、その言葉を聞き逃してはいけない気がして、耳だけに集中する……けど。


「やっぱ、余計なこと言うのやめとくわ」

「はっ……!?」

続けられた篁くんの言葉に気が抜けて、ズルッと滑ってしまいそうになった。