「篁くん、お金っ……」
食事を済ませ、ファミレスから先に出た彼を、慌てて追いかける。
少し目を離した隙にテーブルの上にあった伝票を奪われて、私の分まで一緒に会計されてしまった。
「いい。この前は高宮に奢られたし」
「でも……」
「これで貸し借りチャラってことで」
「……」
きっと何気なく言った、篁くんの言葉に足を止める。
貸し借り……。
そっか、前に私が篁くんに奢ったから。
だから篁くんは、借りを返すために私を誘ったんだ……。
なんだ、そういうことかと、ものすごく納得する。
だけど、どうしてこんな……悲しくなっているんだろう。
「高宮?」
「あ……うん、分かった。ご馳走さま」
問いかけられて顔を上げた私は、何でもない顔をして篁くんに頭を下げた。
……これで終わり。
借りを返すという目的を果たした篁くんと別れて、私は家に戻らなきゃならない。
そして、父さんが帰ってきたら……。



