本当は分かっている。
お母さんと暮らしますって、ひとこと言えばいいだけだって。
色んなことを割り切って、私さえ大人になればすぐ終わる。
だけど……。
「あー……やっぱり家のことで悩んでんだ?」
「……今日の夜、父さんと話しなきゃいけなくなって……」
「ふーん、それでまたそんな顔」
篁くん相手に、何を素直に相談しているんだろう……って、自分でも思う。
だけど、私の口は話すのをやめない。
「篁くんからしたら、バカだとまた思うでしょ。少し話せばいいだけなのに、父さんのことが嫌いで……恨んでて、話したくなくて」
篁くんも一緒だと思ってた。
自分達を裏切ったお母さんのこと、恨んでると勝手に思ってた。
でも……違った。
醜い気持ちにずっと囚われて、思い悩んでいるのは私だけ……。
同情なんていらなかったはずなのに、篁くんが自分とは違うと知った瞬間、ひとりぼっちになったような感覚。
膝の上に置いた手のひらで、スカートをギュッと握る……と。



