すき、きらい、恋わずらい。


「もしかして高宮、俺が母親のこと恨んでるとでも思ってる?」

「……違うの?」


だって篁くんのお母さんは、男を作って家を出て……その先で交通事故に遭ったと聞いた。

結末こそ違うけれど、うちの父さんと同じ。

篁くんだって裏切られた人……なのに。


「俺は恨むほどあの人に思い入れはない。まあ、バカだなとは思うけど」

「うそっ、じゃあ何で!? どうして色んな女の子と……」


気づけば詰め寄る勢いで問いかけていて、ハッとした私は口をつぐむ。

自分でも、どうしてこんなに必死なのか分からない。

ただ、言葉さえ途切れさせたけど、篁くんがどうしてむやみやたらに女の子と関係をもっていたのか、気になってしょうがない。


「べつに、いちいち断るのも面倒だったし。ちょっと相手して離れてくれるんならいいって思っただけ」

「……」

「自分と違ってショックだった?」

「っ……」


意地悪にフッと笑う篁くんに、ぐっと言葉を飲み込む。

そんな言い方されたら、まるで私が心の小さい人間みたい。

父さんのことを恨んで、憎んで……。