「知ってる、けど……」
あまりにあっさり言い放たれた言葉に困惑する。そんな私を放っておいて、
「なんだ。何にもねーじゃん」
篁くんは、私の後ろの冷蔵庫を見て呟いた。そして、
「高宮、今日なんか予定あんの?」
「べつに……夜までは特にないけど」
「じゃあ、昼メシ食いに行かね?」
「……え?」
全く予想していなかった誘いに、私は目を丸くする。
「や、嫌なら無理にとは言わないけど」
そう告げて、目を逸らす篁くん。
その姿に、フッと私の頭の中をよぎったのは……ありさのこと。
ここにありさはいない。
だから、篁くんとご飯なんて行かない方がいいのは分かっている。
私だって、何で篁くんと……って思う。
でも……。
「……うん、行く」
私はこくんと頷いていた。



