私は言われた通り、テーブルの横に荷物と自分の腰を降ろす。
嫌でも目に入るのは、お母さんのスマホ。
「ね、さっき電話してたのって、もしかして……父さん?」
私は紅茶を入れて戻ってきたお母さんに、恐る恐る問いかけた。
『もしかして』なんて口では言いながら、電話の相手が父さんなのは分かりきっている。
私が本当に知りたいのは……。
「あ……うん、そう。結月、母さんと住むことまだ言ってなかったんでしょ」
「え……」
「私が話したら、すごくびっくりしてたから」
「……」
苦笑いして言うお母さんに、バツが悪くて黙り込む。
お母さんとのことを話していないどころか、あれからずっと会話も顔も合わせていない。
さすがに住む家を変えることは話さなきゃと思っていたけど、でも……。
「お母さんが話してくれたんなら……」
「気持ちは分からなくもないけど、ちゃんと話はしなさい」
『もういいよね』と言おうとした言葉は、お母さんの声によって遮られた。
「日曜日、お父さん時間大丈夫らしいから」
私が知りたかったのは、お母さんと父さんの会話の内容。
だけど聞くんじゃなかったと、今更ながら後悔した。
「ちゃんと話してから、お母さんのところにおいで」
柔らかく、優しく微笑むお母さん。
そんな顔で言われたら、嫌だなんて言えない。



