「気にしないで。私も色紙やらなくちゃと思ってたから……」
「でも、僕とふたりになるのは嫌だった?」
「えっ」
影山くんの発言に、ハッと顔を上げると、
「ごめんね」
ほんの少し寂しそうに、影山くんは微笑んでいた。そして、
「返事はいつでもいいから。待ってるから」
「それじゃあ気を付けて」と続けて、影山くんはそのまま背を向けた。
「……」
思いがけず、あっさり玄関に取り残された私。
遠ざかっていく姿を見つめながら、ちくんと胸の奥が痛んだ。
突然告白してきたり、ありさのこととか意地悪みたいに言うから、影山くんのことを少し苦手に思い始めていた。
だけど、影山くんは私のことを想ってくれている……きっと、それだけ。
なのに、私は……。
たぶん、早く離れたいと思っていたことなんかも、影山くんは気付いていたんだと思う。
それでも、『待ってる』なんて言えるのはどうしてなんだろう。
どうして、こんな私を好きなんだろう。
考えても分からなくて、小さくため息をついた。
でも、何だかんだ言って、返事を求めてこない影山くんは……ずるいよ。



