本当に何で私が、篁くんのことなんか気にしなくちゃいけないの……。
そう思うのに、まるで悪いことでもしているように、ドクドクと心臓の音がうるさい。
「だったら……」
そこに響く、影山くんの声。
「何とも思っていないなら、あんまり篁くんに近付かない方がいい。天崎さんを不安にさせるだけだよ」
「え……」
「高宮さん、篁くんにちょっと気に入られてるから。親友といえど、やっぱり気になると思うんだ」
気に入られてる……って。
そんなのみんなの前でついた嘘で、本当は嫌われているだけ……なのに。
「高宮さんは天崎さんを傷つけたくないでしょ?」
小さく微笑んで言った影山くんの言葉は、何も考えていなかった私に突き刺さるようだった。
ありさの為に、篁くんと一緒にいなきゃと思っていた。
だけど、私はありさのいないところでも……むしろ、いないところで……。
「ごめん。手、止めちゃったね。高宮さんは続きやってて。何か飲み物買ってくる」
言葉を失う私の様子を察してか、そう言って立ち上がった篁くん。
だけど私は彼が出て行ってからも、止めた手をなかなか動かせなかった。



