高校に入って、初めての卒業式を終えた日。


特別棟と呼ばれる、教室の向かい側の校舎の階段を降りていたときだった。



「ふふっ……」


聞こえた誰かの笑い声。


急いでいた足を緩め、一段二段と降りていくと見えたのは……


吹き抜けの階段の踊り場で、

至近距離で話す、男女の生徒の姿。


「っ……!」

見てはいけないだろう光景に、咄嗟に隠れる。


いわゆる壁ドンっていうやつか、男子の方が女子を壁際に追いやっていた。

それも、唇同士が触れそうな距離で。



「会長も俺のことが好きだったんだ?」



ちらりと見えた姿にもしかしてと思ったけれど、不意に聞こえてきたその言葉により確信へと変わる。


壁ドンされていた女子生徒は、先ほど式で答辞を読んでいた……前生徒会長。


そして、男子生徒の方は――。