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「……や、高宮」
放課後。
ぼんやりしながら帰りの支度をしていると、トントンと軽く何かで肩を叩かれて、振り返った。
すると、席に着いたままの篁くんから差し出されていたのは、一冊のノート。
「これ、写し終わったから」
「あ……うん」
頷きながら受け取ったそれは、貸してと頼まれていたもの。
少し前の私なら、篁くんにお願いされたって、嫌だと断っていたと思う。
それなのに……。
「またボーッとしてるけど、なんかあった?」
「えっ……」
真顔で問いかけられ、少しドキッとした私は、
「別に何も……」
慌てて返事して、逃げるように前を向き直した。
何か、ちょっと変。
自分の行動、感情が、いつもと違う。
受け取ったノートに、戸惑いと微妙な気持ちを膨らませていると、
「高宮さん」
今度は前から声をかけられて、顔を上げてみてビクッとした。
私の前に立っていたのは……。