さすがにこの状況じゃ、ありさも近寄る気にならないみたい。


「ごめん」

……って、私は自分の席に座ってただけなんだけど。

触れる程度にぶつかった、後ろに立っていた女の子に意味もなく謝って、私はその場から立ち去ろうとした。


――ところが。


「あ、蒼空くん、わたし今日までの授業のノート貸してあげるよ!」

女子のひとりから上がった声に、


「あー……いい。高宮に貸して貰うから」


返事した篁くん。

不意に私の名前を出され、思わず足を止める。


今、私に貸して貰うって言った……?

振り返って見てみれば、篁くんしか見ていなかった女子達がみんなこっちを見ていて、どうやら聞き間違いではなかったみたい。


何で私……?と、目をパチパチさせていると、

「高宮、ノート貸して」

と、気怠そうに篁くん。


……その態度は、いつもと違う。

いつも私以外の女子の前では、ニコニコと愛想よくしていたはずなのに。