きっと篁くんのお父さんは仕事。……となると、隣に住んでいて幼なじみのありさが篁くんの看病をするのは、自然なこと。

篁くんも安心……な、はずなのに。


「ゆづ、良かったらちょっとうちに寄っていかない?」


ニコッと、屈託のない笑顔で誘うありさ。

いつもなら『うん』と頷いて、お邪魔させてもらう。

家に帰ってもひとりだし、ありさとお喋りするのは好きだから。


……だけど、今日は。


「ううん、ごめん……今日は家のことやらなきゃだから、このまま帰る」

「そう?」

「うん、ごめんね」


「また明日」と、笑顔を貼り付け手を振って、私はありさに背を向けた。



どうしてこんな気持ちになるのか分からない。

分からないけど、胸の奥がモヤモヤしちゃってしょうがない。


たぶん、篁くんがあんな風に笑ったりするからだ。

私の頭から一向に離れてくれなくて。


ありさが篁くんの様子を見に行くのを、嫌だ……なんて、思うのは。