「付き合わせちゃって、ごめんね」
篁くんの家を出てから、そう私に謝ってきたありさ。
「緊張しちゃって、うっかりふたりっきりにさせちゃって……困ったでしょ?」
眉をハの字にさせ、申し訳なさそうに言われ、
私は「ううん……」と首を振る。
確かにどうしようとは思った。
だけど、困惑した理由は、ありさの心配しているものとは少し違う気がする。
きっと、私が篁くんを嫌いだから困ったと思っているありさ。
……って、あれ?
私は今も、篁くんのことが嫌いなはずなのに。
同じ空気を吸うのすら、嫌だったはずなのに。
一緒にいるのが、ふたりっきりの空間が……いつの間にか、嫌じゃなくなっていた。
それどころか、私は……。
「ありがとう。おかげで助かった」
ひとり困惑する私をよそに、にっこりとありさは笑顔を浮かべる。
「少し慣れてきたから、また後から行ってみる」
「え……?」
「蒼空の様子見に」
「あ、あぁ……」
そういえばさっき、篁くんに「様子見に来る」って言ってたもんね。
思い出して、納得する。



