顔を上げてみて、ドキッとした。

だって、篁くんが……笑っていたから。


口元に手をあて、くしゃっと笑った篁くん。

いつも女の子に向けている上辺だけの笑顔とは違う。自然なその表情に、私は思わず息を止める。


「高宮」


私の名前を篁くんが静かに呼んで。

ぶつかる視線と視線。


顔が赤いのは熱のせいだって、分かっている。

だけど、少し潤んだ瞳。
いつもより色っぽく見える篁くんの表情に……困る。


私の顔も何となく熱くて。
だけど目も逸らせずにいると、篁くんの口がゆっくり開こうとした。

――その時。



「遅くなっちゃってごめんね」


ガチャッとドアを開け、部屋に入ってきたのはありさ。


「あ、何か話してる途中だった……?」


私と篁くんの様子に察するものがあったのか、足を止める。


「ううんっ、別に大した話はしてないから」

少し慌てた私が一歩下がって返事すると、「そっか」とありさは呟いて、篁くんのベッドの前で膝をついた。