自分でも分かる、私の顔が赤いこと。
だって今、お礼を言っている。
……あの篁くんに。
こんなの癪だし、恥ずかしすぎる……けど。
『ねぇ結月、何かあったの?』
土曜日。落ち着いてから、今後のことをゆっくり話している途中、お母さんがそう聞いてきた。
『なんていうか今日の結月、いつもより素直な気がするから……。何か、気持ちの変わることでもあったの?』
柔らかく微笑んで、首を傾げたお母さん。
別に何もないよと、誤魔化すことしかその時は出来なかったけど……。
本当は分かってた。
私が素直になれたのは、篁くんのおかげ。
篁くんが素直になればと言ってくれたから、私はお母さんに本当のことを言うことが出来た。
だから……。
「……ありがとうって、言いたくて」
篁くんの顔は見れない。
恥ずかしさに俯いて、告げた私。
そのまま、ほんのすこし沈黙の時間が過ぎた。そして、
「あんた……ほんと、調子狂うな」
静かに響いた、篁くんの声。



