すき、きらい、恋わずらい。


「天崎いるー?」

そう言って、教室の戸口からひょっこり顔を覗かせたのは、増田先生。


「あ、はいっ」

ありさが箸を置き返事すると、

「食事中のところごめんね、ちょっとこっち来てくれる?」

増田先生は片手でごめんと謝って、もう片手でありさを手招きした。


なんだろう……。

ありさが出て行き取り残された私は、お弁当の卵焼きを箸でつまんで、口の中に放り込む。


篁くんは一人で、何か食べるものはあるんだろうか。

……って、私が心配することじゃないけれど。


何となく箸が進まなくなっていると、すぐにありさが戻ってきた。

でも、その様子は何だかおかしい。


「どうしたの……?」

腕に数冊の本やプリントを抱えて。
少し戸惑った顔をしたありさに首を傾げて尋ねてみると、周りをキョロキョロ見渡した後、席に着いた。

そして、


「蒼空の所に持って行ってって、頼まれちゃった……」


机の上に抱えていたものを下ろして、小さく口を開いたありさ。


詳しく聞けば、増田先生に家が隣だと気付かれ、連絡物などを届けるように頼まれたらしい。