「蒼空くん、今日来てなくない?」

「遅いね……休みかな?」

「えーやだ。蒼空くんいないとか、学校来る意味ないー」


ホームルームを前に、席に着いた女子達からそんな声が聞こえてくる。


チラチラとみんなが目を向ける、私の後ろの席は空いたまま。


どうしたんだろう。
本当に休み……とか?

それともどこかで誰かと……。


フッと頭によぎったのは、あの卒業式の日のこと。

吹き抜けになった階段の踊り場で、触れそうな距離まで顔を近づけていた前会長と、篁くん。


「っ……!」

思い出したらカッと身体が熱くなって、息をするのも苦しくなるような気がして、ぶんぶんと首を横に振った。


なに考えてんの、私。

篁くんが休もうがどこで何をしていようが、関係ない。関係ない……はずなのに。


今にもキスしそうな篁くんの姿を思い出したら、嫌だな……って、そう思った。

今までの嫌悪感とは少し違う。

上手く言葉に表せないけど、嫌だな……って。


結局そのまま、増田先生が教室に入ってきて、ホームルームが始まった。

そして、篁くんはというと――。