何もないって言ってしまっていいの?
本当のこと、言わなくていいの……?
伝えたらきっと、お母さんは悲しい思いをする。
だから言わない。
伝えないって決めてきた。
……大丈夫、まだ何とかなる。
私が反対して抵抗している限り、父さんは動けないから。
だから……だけど……。
「結月……?」
もう一度名前を呼ばれ見ると、お母さんは小さく頷く。
「え、だからなにも……」
ないよって続けて笑顔を作りたいのに、頰が引き攣って作れない。
『あんた、限界って顔してる』
こんな時に頭の中に浮かんできたのは、篁くんの告げた言葉。
やめて。限界なんて決めつけないで。
私はまだまだやれる、頑張れる。
……そう思っていたのに。
『素直になれば』
「っ……」
篁くんの声を思い出した瞬間、涙が込み上げた。そして、
「お母さんっ、ごめん……。父さんに、再婚したいって言われた……」
声に出したと同時に、せきを切ったようにこぼれ落ちる涙。



