すき、きらい、恋わずらい。


ズルッ。

「あっ……」


足を踏み外して、身体が一瞬宙を浮く。

咄嗟に手すりに捕まろうとするけれど、その手も滑ってしまって。


だめっ……!

痛みを覚悟し、ぎゅっと目を閉じる……けど。


「っ……!!」

誰かが、私のお腹を抱えるようにして、抱き止めてくれた。

その瞬間、肩に下げていた私のカバンだけが、階段の下へと転げ落ちる。


……た、助かった。


ヒヤッとした余韻で、ドキドキしながら助けてくれた人へと意識を集中させる。

抱きかかえられるようにして、ぴったりとくっついた身体。

助けてくれた人の、上がった息遣いがすぐ近くで聞こえる。


私を助けてくれたのは……。


「お前さ、もっとちゃんと前見て歩けよ」


ため息混じりに吐かれた言葉。

聞き覚えのある、知ってる、声。


なんで……いるの。


誰だか分かった私は、ゆっくりと顔を向ける。

すると、呆れた様子で私を見つめるその人は……やっぱり。


篁くん、だった。