「ありさ、ちょっと来て……!」
私はありさの腕を掴み、教室から出た。
「なに、どうしたの?ゆづ」
連れられるまま歩きながら、当然戸惑いの声を上げるありさ。
私は廊下を黙って進み、玄関とは逆方向の人気(ひとけ)の少ない階段の踊り場まで来て、足を止めた。
「ゆづ……?」
そっと手を離した私の名前を、もう一度ありさが呼ぶ。
ありさの恋をどうこう言う資格なんてないのは、分かっている。
だけどひとつだけ……。
「……ありさは、いいの? 篁くんは原田さんとか、色んな女の子と、その……そういうことしてるんだよ……?」
振り返った私は、ありさの目を真っ直ぐ見て、問いかけた。
幼なじみだから、篁くんの良い面もいっぱい知っているのかもしれない。
でも、今の篁くんがしていることは……。
あんな不誠実な男で、本当にいいの……?
私の言葉を聞いたありさは、少し驚いたように目を見開いた。
だけど、すぐにふっと微笑んで。
「心配してくれてありがとう。でもいいの、あたしは。一度きりの関係なら全然いい。むしろ、それで原田さんとか他の女の子が近寄れなくなるなら……嬉しいかな」
答えたありさには、何の迷いもなかった。



