すき、きらい、恋わずらい。


騒がしかった室内が、ひっそりと静まる。

みんなが私の後ろの席に注目していることが分かる。

……そりゃあそうだ。


「早く行こう」

「……あぁ」

原田さんに返事する篁くん。

次にはカタンと、席を立つ音が聞こえた。


これから、ふたりは……。


「すごいよね、原田さん……」

「あんな堂々とね」

ふたりが教室を出て行った後、そんなヒソヒソ話が聞こえてきた。


原田さんが篁くんを誘った……ということは、これからふたりは関係を〝持つ〟ということ。


「でも、いいのかな。明日からはもう構ってもらえないんでしょ?」

「うーん、でもどっちにしろ彼女にはしてもらえないしね……。高宮さんでもないと」


聞こえないように喋ってるつもりだろうけど、ばっちり聞こえてる。

思いがけず名指しされた私は、平然を装いながらカバンに荷物を詰める。


あいにくだけど私だって、本気で彼女にされたいと思われているわけじゃない。

私が男嫌いだから、困らせるために近づかれただけ。

――私が篁くんを嫌いなように、篁くんも私を嫌いだから。