……さすがにちょっと、あからさますぎたかも。
廊下を早足で歩きながら、そう反省する。
でも、ありさがいきなり篁くんを呼んだりするから。
普段は全く話しかけたりしないのに……って、あれ?
珍しく篁くんの名前を呼んで……ありさは何を言うつもりだったんだろう。
気付いた私はピタッと立ち止まる。
気になる……けど、今さら教室になんて戻れない。
最も、やっぱり篁くんの顔を見たくない。
あんな最低な男(ひと)の顔なんて……。
思い出したらまたモヤモヤしてきて、とりあえず進もうと顔を上げる。
すると、
「あっ、高宮さん!」
そう言って、私の目の前から向かって歩いてきた人は……影山くん。
「あっ……」
よりによって、また会いづらい人に……。
無意識のうちに後ずさりしそうになる。だけどそれを、きゅっと踏ん張って堪えて。
「お、おはよ……」
昨日のこと、何を言われる、聞かれるだろうとヒヤヒヤながら、無理やり笑顔を浮かべた。
とりあえず上手く誤魔化せますように……と、思うけど。



