すき、きらい、恋わずらい。


対抗意識を向けられても、正直私には関係ない……けど。


少し忘れかけていた。

篁くんが『そういう人』だってこと。


特に優しい言葉をかけて慰めてくれたとか、そんなのじゃない。

そんなのじゃない……はずなのに。


昨日、なんだかんだでずっと一緒にいたせいか、思っていたより悪い人ではないのかも……なんて、そんな気持ちになっていた。

それに、遊園地で会ったそらくんのこともあって、ちょっとだけ見直していたのに……。


結局篁くんも、父さんと同じタイプの人間。

私の最も嫌いな人種。


「っ……」

カバンの持ち手を握ったままの手に、ギュッと力が入る。


どうしてだろう……すごくすごく、やるせない。


「ゆづ……?」

ありさが『どうしたの?』とばかりに、私の顔を覗き込んできたと思ったら、

「蒼空」

次の瞬間、後ろの席を向いて、篁くんの名前を呼ぶから……。


えっ、何でっ……!?

「あのっ、ごめん、私お手洗い行ってくる」

焦った私は慌てて、教室を飛び出した。