「ねぇ、蒼空くん! 聞いてるっ!?」
少し怒ったような、原田さんの声。
「ちゃんと聞いてるよ」
篁くんはいつもと、多くの女子の前と変わらない声色。
「じゃあ……」
「わかった。放課後な」
「ほんとっ!?」
振り返って確認しなくても分かる。
さっきとは打って変わって違う、嬉しさに弾んだ原田さんの声。
「じゃあ、今日の放課後ね!? 絶対、絶対約束だからねっ!?」
はやる気持ちを抑えきれないといった感じで、早口でまくし立てるように言うと、珍しくそのまま篁くんのそばを離れた。
そして、私の隣を通り過ぎようとした瞬間。
フフンッと勝ち誇ったように笑われて……。
「……」
私は思わず、ポカンとする。
いや、だから対抗意識を向けられても困るんだってば。
そんな心の声も届かず、原田さんは自分の席へと向かって行って。
「あ、ちょっとエリ!待ってよ!」
取り巻きの仲間達も、慌てて彼女の後を追いかける。
そして、いつもより静かになった私の席の後ろ。
静まり返っていた室内も、次第にガヤガヤと元の騒がしさを取り戻す。



