『ごめんね』と心の中で謝って、私達は足を進める。そして、自分の机の上へとカバンを下ろしてから。
「そういえば、昨日あれからありさは?どうしたの?」
ふと疑問に思ったことを問いかけた。
私が突然帰るといなくなって。
影山くんとふたりになって……。
「あぁ、せっかくだからって、影山くんとご飯食べたの。ゆづは……」
「それでもいいって言ってんの!今日の放課後、相手してよ!」
ありさの言葉の途中。
突然聞こえてきた大きな声に、教室内がしんと静まり返る。
振り返って見てみれば、いつものように女子数人を従えて、教室に入ってきたのは篁くん。
そして、さっきの声の主……篁くんの腕に自分の腕をぐるんと巻き付けるのは、原田さん。
放課後、相手してって……。
原田さんがさっき口にしたことを、頭の中で復唱する……と、ふいに篁くんと目が合った。
「っ……」
ドキリとして、慌てて前を向く私。
昨日のことがあったせいか、何だか学校で顔を合わせるのが……気まずい。
硬直する私をよそに、足音はどんどん近付いてきて。
ドスッと鞄を置く音が、すぐ後ろで聞こえた。



