「あの人だけ幸せになるなんて、許せないから……」
そう、許せない。
あの人が幸せになるなんて、絶対に。
「お母さんは、ずっとひとりで苦しんでるのに……先に幸せになるなんて許さない」
言葉にすれば、またむくむくと湧き上がってくる感情。
いくら彼女の前だったとはいえ、再婚しようと思うとか、よく言えたものだと思う。
「それだけ?」
「え?」
「いや、ふーん……」
ふーん、て……。
聞いてきたのはそっちなのに、興味があるのかないのか分からない返事に眉を寄せる。
……ていうか私も、何でこんな話をしてるんだろう。しかも、篁くん相手に。
とにかく話題をそらそうと顔を上げる……と、
「あんた、もうちょっと素直になったら? 女なんだから、もっと上手く周りに甘えればいいじゃん。ひとりで頑張って、バカみてぇ」
「…………なっ!」
何を言われたのか、一瞬理解出来なかった。
珍しく長文で話すから、私はキョトンとして。
そして、真っ先に頭の中に入ってきたのは『バカみてぇ』という言葉。



