「あのっ、さっき言ったことは……」
「再婚するとか?」
「え……?」
思いきって『忘れて』と、声をかけようとした。だけどそれを遮ってきた篁くんの言葉に、私は目を見開く。
「あんたの親父と一緒にいた女、恋人でしょ」
「っ……」
そっか。それくらい、見たら分かる……か。
『恋人』なんて、肯定するのもしゃくで、私は何も言わずに、また彼から目をそらす……けど。
「あんたさ、本当は親父のことが好きなんじゃねーの?」
「はっ!?」
思いがけない篁くんの発言に、大きな声を上げずにはいられなかった。
だって、私が父さんのことを好きなんて……。
「そんなことあるわけないじゃない! あんな人、大っ嫌い!」
私の男嫌いも全部、あの人のせいなのに。
「じゃあ何であんな泣いてたわけ?」
「それは……」
篁くんの問いかけに、膝の上に置いた手でスカートをぎゅっと掴む。
父さんに再婚話を聞かされて、私が泣いた理由……それは。



