「どうし……」
「ごめんっ!私、さっき父さんに急用頼まれちゃって!先に帰るね!」
急用、なんて無理やりすぎる言い訳。
戻ってきて、ここまで付いてきて、矛盾していることは私にも分かる。
だけど、ありさは私と父さんの関係を知っているから。
そんな心配そうな顔をされたら……無理だった。
冷静を装うことなんて、無理でーー。
また、逃げるようにみんなの前から走り去った私。
「ゆづ!」って、ありさが声を上げたのが聞こえたけど、足を止められなかった。
影山くんと篁くんの中にありさをひとり残してきて、酷いことをしてしまったと思う。
でも、今それよりも胸の中を締めていることは……。
「高宮っ!!」
プァーッ!!
突然響き渡ったクラクション。
キイーッとブレーキを踏む音と、目に飛び込んできた車の姿に足がすくんだ瞬間。
誰かの叫び声と一緒に、私の腕は誰かに引かれ、尻もちをつく形で後ろに倒れた。



