「……随分若い人だね」
みんなが待っている所から少し離れた場所。
人の通りの少ない階段の踊り場で、私は向き合って立った父さんの顔も見ず、ムスッとした顔で告げる。
それは、言うまでもなく嫌味。
返事のない父さんに、どんな顔をしているんだろうと目を向けると、さすがに気まずそうな顔をしていた。
……そんな顔をするなら、あんな若い人と付き合わなければいいのに。
父さんの顔を見ていたらイライラしてきて、私はフイッと顔をまた逸らす。
「それで……話って何ですか」
あくまで冷静を装おうけど、心臓はバクバクとうるさい。
父さんが何を言おうとしているのか、だいたいわかる。
きっとあの、女の人のこと。
だからわざと、言い出しにくくなるようなことを言った……のに。
数秒間の沈黙の後。
「……再婚しようと思うんだ」
「っ、はっ!?」
同じショッピングモールの中とは思えないくらい静かなその場所には、父さんと私の声がよく響いた。
何を言われても動じないつもりだったけど。



