「ただいま……」

ガチャンと玄関の鍵を開けて、家の中に入る。

返事はもちろんなく、ひと気を感じない冷たい空気にホッとする。


【話したいことがあるんだが、いつなら時間とれる?】


遠足があったあの日、父さんから送られてきたメッセージの返事はしていない。

何度か家に帰ってきたようだけど、わざと避けて顔を合わせてもいない。


話なんか聞きたくない、聞かない。


私は真っ直ぐ2階の自室に向かい、パタンとドアを閉めた。

そして、肩にかけたカバンを床に落とし、ベッドの上へとダイブする。


「……」

うつ伏せのまま、ゴソゴソとポケットから取り出したのはスマホ。

何気なしに画面を点けると、メッセージの通知が1件あった。


【お休み取れました。結月に会えるの楽しみにしてる】


その内容と、続けて送られていた、投げキッスをしているうさぎのスタンプに、フッと笑う。


【私もお母さんに会えるの楽しみにしてるね】


そうメッセージを返して、プレゼント用意しておかなきゃと、ぼんやり思った。