「今日みたいなことがまたないとは限らないし、学級委員同士知ってた方が便利でしょ」

「あ、うん……」


頷きながら、私もスマホを取り出す。

男子とは正直あまり交換したくないけれど、影山くんは同じ学級委員だし、知っておいた方が便利かもしれない。

それに、私が苦手とするタイプとは違うし……。


パッと画面を点けると、メッセージアプリから二件の通知が届いていた。

一件は【どこにいるの?】と、30分ほど前にありさから。

もう一件は……、


【話したいことがあるんだが、いつなら時間とれる?】


……それは、父さん。



「高宮さん?」

「あ、うん、ごめんっ」

影山くんに声をかけられ、私はそのメッセージを削除する。


分かっていた。
昨日父さんが帰ってきた理由。

分かっていたから、わざと顔を合わせないようにした。
分かっていたから、眠れなかった。


私は話すことなんて……何もない。



『平気そうに見えるけど、かなり泣いてたよ』


現実なのか夢だったのか、もはや分からない言葉が頭の中に響く。


……平気だよ、私は泣いてなんかいない。