終わりから始まる、その軌跡

湿気を含んだ空気の中をするすると流れてきたのは、コクのある香ばしい香り。

その後、少し遅れて漂うは、――

低下していた意識レベルの数値が一気に持ち直すくらいの、濃厚な刺激を持って僕の目を覚まさせた。


…これって、バター??

ガーリック??


一瞬にして胃袋を掴んだパンチの効いた匂いに、雨の音すら静まったかのようだ。


うわっ、――。

すっげー、美味そうな匂いしてんだけど……。


…って、どこからだ??


無意識に歩みを止め、辺りをきょろきょろと見渡した。


―― あっ。


細い路地の向かい側。

歩道脇にひっそりとある、白木の看板。


そこには小さなライトが括りつけられ

青い文字で『カフェ食堂 帆波』と書かれてある。


匂いの出どころを見つけた瞬間、ピコンとアンテナが立つわけで。


……腹、へったな。


気持ちに張りが生まれたところで、ぐうと派手にお腹が鳴った。