各停しか停まらない小さな駅の、駅前にあるバスのロータリー。

つい今しがた発車したバスのエンジンから排出された白い気体に目を向けながら。


「…どうしよ…っかな…」


幾度となく呪文のように唱えた言葉をまた繰り返した。


駅のシンボル、記念時計に目をやれば、ブルーのLEDライトに反射された細く長い雨が、静かに風に漂っていた。


どうやらあれから二時間は経過しているらしい。


いったい何本のバスを、僕はここで見送ったんだろう。


……どっか……行く??

って、―― どこに??


行く当てなんて、どこにもないのに。

だからって、ずっとここにいるわけには……。


でも、どこに行けばいいんだ??


そんな堂々巡りの感情を、さっきから随分と繰り返しては、未だに動けないでいる。


「さむ……」


とにかく、ここにいたって仕方がない。

飽和状態の感情を持て余したまま、僕は膝の上に乗せた黒いリュックを肩に掛け直し、重たい腰をようやく上げることにした。