しとしとと、――

老朽化したベンチの木目に、雨の粒が模様を描いていく。

さっきまでふわふわと舞うように降っていた雪は、いつの間にか雨に変わっていた。


……さてと、…


「…どう…しよっか……」


吐き出した息が淡く霞んで消えていく。


「……」


ゾフィー・カルトイザーは、グリーンが憂愁の色だって歌っていたけれど。

僕が吐き出す憂愁の色は、青みを帯びた白磁色だ。

水蒸気を含んだそれは瞬く間に立ち上り、濃紺のグラデーションの世界へと溶けて消えていく。


……家に…帰ろうかな、うん。


何も見ていない。

何も見ていないんだ。


そうすることにするのが、……一番いいと思う。


このまま何事もなかったかのように振舞って……。


「……っ」


……何事もなかったかのように??


そんなこと、僕に……出来るのか??


「はあ……」


そもそも、どんな顔して、戻れば…いいんだ……??


あああ、さっぱり、わからないや。