あたしは彼を見た。

いつもはラフな格好で笑っている彼は、白い調理着を着ている。

そんな藤井さんは、いつもの藤井さんとも玄とも違って見えた。

そして、藤井さんがFの玄だと気付いている客は、誰もいないようだ。





「繁盛してるんだな」



皮肉っぽく言う遥希に、



「おかげさまで」



藤井さんはいつもの人のいい笑顔を向ける。

こんな藤井さんのいつも通り笑顔に、なんだかホッとした。