《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「はぁあ？　ますます意味わかんねぇし…。しかもどんだけ食うんだ、っておい！　あの女、変態野郎と一緒なのかよ？！　もしかしてあいつらグルなのか？」

「ち、違うと思うけど…」

「ま、別にどーでもいいし。でもあいつらとはあんまり関わんなよ？」

「……うん」

「何だよスズ、具合悪いのか？　さっきソニャから聞いたぜ」

「ぜんぜん平気だよ！　ソニャちゃんたら大袈裟なんだから。セィシェルこそあの後ちゃんと眠れた？」

「まあな…」

　何処か不機嫌そうなセィシェル。やはりまだ眠気が残っているのだろうか。

「あ、あっちのお客さんが呼んでる！　行ってくるね」

「おい、スズ！」

「なあに？」

「やっぱり何でもねえ…」

「？」

　浮かない表情のセィシェルを後目(しりめ)にスズランはまた店内を駆け回った。この日は何とか躱すことが出来たあの視線。
　だが次の日も、そのまた次の日、またまた次の日と……スズランはほぼ毎日来店するライアという人物に頭を悩ませていた。
　もう一週間にもなるだろうか、今日も店を開けて暫くするとライアは現れる。

（ま、また来てる…）

　背中にライアの物言いたげな目線を感じながらも何とか仕事に気を向けていた。