《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「ふふ、スズランちゃんもそぉ思うでしょう？　少しで良いから今から彼とお話ししてみない？」

「えぇっ！？　だ、だめです、お話なんて…！」

「あら、何故？」

　エリィに手を引かれそうになり急いで抵抗する。

「わたしっ…まだお仕事の途中だし、その……約束もしてて。とにかくごめんなさい！」

「約束？　何の約束か分からないけど大丈夫よ、少しだけだから。彼ね、貴女とお話を…」

「おいこらゾンビ女！　何スズに言い寄ってんだ？」

　強引なエリィに困っていると、背後からセィシェルの低い声が降ってきて直ちにその背中側に立たされた。

「セ、セィシェル…！」

「あらぁ番犬(ナイト)君じゃあない。こんばんは！」

「…ちっ。スズに触るなよ」

「うふふふふ、今日も頑張っているのねぇ。そぉね……じゃあ今日の所は貴方の勝ちって事で引いてあげるわね！」

「は？　意味不明だし」

「今の所貴方の方が男らしいって事よ！　あ。あたしの注文だけど、あの葡萄酒と魚介の炊き込みご飯(パエリア)とデザートに焼き菓子(パンチネタ)をお願いね〜」

　エリィは忘れずにしっかりと注文を告げてセィシェルに片目を閉じて見せるとくるりと踵を返し、元いた席へと戻っていった。