《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「!! っごめん。あの人の注文ソニャちゃんにお願いするね…」

「あっ! ちょっとスズ?!」

 軽く戸惑うソニャに背を向けカウンターの奥に駆け込んだ。
 ───まさか今日も来ているなんて……。
 スズランは訳も分からず震える胸の鼓動を押さえつけ、その客の視線から逃れる様にその場にしゃが込んだ。

「…っ」

「レフさぁん! タコス一つ、ピクルス抜きでお願いしまーす!」

「了解〜!」

 注文を取り終えたソニャは厨房に声をかけるとしゃがみ込んでいるスズランを見つけ心配そうに駆け寄ってきた。

「スズ! ちょっと大丈夫? 疲れてるならやっぱり…」

「……」

「どしたの? 不安そうな顔しちゃって。あ、ねえ。さっきのお客だけど間近で見たらもう超絶イケメンでやばいって! 注文取ってる最中、逆ナンされたし! しかもその声掛けてきた相手がまた超のつく美女でさ! 恋愛小説みたいな美男美女カップルの誕生を目の当たりにした気分〜」

 スズランを心配しつつ、若干興奮気味で話すソニャ。その話の内容にまさかと思いながらゆるゆると立ち上がり、もう一度先程の方向に目を向けた。
 視線の先には〝例の男〟ライアの姿。そしてその傍らで美しく微笑むエリィの姿があった───。