《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「スズは気にしなくていい。あの時はまだ小さかったから覚えてないだろ? こいつのせいで大変だったんだ……それに前に教えただろ、変態でロリコンっぽい男がいるって話」

 セィシェルがそう耳打(みみう)ちしてきた。
 ───そう言えば以前、そんな話を聞かされていたのを思い出してスズランは顔を(しか)めた。
 何年か前に店に来ては若い女性を(はべ)らせ、毎日取っかえ引っ変え遊び回っている男が居るから気をつけろとセィシェルから言われていた。しかしそれが今目の前にいる男なのだろうか。確かにその甘い容姿は、女性が放っては置かない色男そのものだろうが……。
 スズランは男を訝しげに見つめた。

「っ…おいちょっと待て! 俺はロリコンでもなければ、変態でもない! 何を勝手な事…」

「どーだか! スズにあんな事をしておいて…。それにあんた四、五年前にうちの店でよく何人もの女に囲われてただろ。まるで女を(はべ)らせるみたいにしてんの何度も目撃したしな」

 セィシェルの言葉を聞いて納得したのと同時に、どうしてか胸の辺りがもやもやとしたよく分からない感じになる。

「……」

「とにかくこいつは女好きの変態には違いないだろ! スズには絶対に近づかせない!」