《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「何故そこまでスズランに反感を持つんだ。それにもう首の輪飾りは外れた筈だ! だったらハリとの関係は…」

 ライアは床に転がっていた首輪飾りを見つけて手に取るが、即座にハリに奪われてしまう。

「っ…返せ! これは渡さない、これは僕のだ…! それに鈴蘭にはまだ僕の暗示が…」

「ハリ…!」

「はっ……君こそ必死だね。随分と大切にしてるみたいだけど、何で?」

「俺は生命(いのち)をかけてスズランを守ると決めている。スズランは俺にとってかけがえのない人だから。それに、理由なんて関係ない。ただ俺が守りたいんだ」

 真っ直ぐな言葉に熱がはじけて全身に駆け巡る。一際熱が集中する真っ赤な顔をライアの胸に押し付けて隠した。しかし次にハリが放った言葉で不安の種は簡単に、再び芽吹く。

「ふうん、でも納得出来ないな。だってそれって本当に君の気持ちなの? 鈴蘭はフルールの一族だ。この一族は特有の〝香り〟で人を駄目にするだろ? 君もそれにあてられてるだけでしょ」

(っ…もし、もし本当にそうだったらわたし…)

「違う」

「即答、ね。なんでそう言いきれる?」

「彼女は俺に生きる理由をくれた。何よりも大切で愛しい存在だから」

(ライア……)

 熱情のこもったライアの返答に顔を歪ませるハリ。