むしろ居心地はとても良い。
 ラインアーサはまるで大事なものを丁寧に触れる手つきで優しくスズランを撫でる。陽だまりの中で何処までも甘やかされている子猫の様な気分になる。
 しかしそれでは駄目なのだ。ラインアーサは日々数多くの公務をこなしている。疲れていない訳がない。

「ああ。疲れてないって言うと嘘になるかな。でも今こうしてスズランに触れてるだけでかなり癒されるけど?」

「…っ! そ、そんなわけ…」

「あるよ。だったら、もっと癒してもらおうかな…」

 スズランの顔ばせにふわりと影が落ちる。焦がし砂糖を垂らした様な柔らかな色合いの髪が目の前に迫る。
 少し癖毛で触り心地の良さそうなその髪にそっと触れると、予想以上にさらさらと指の隙間を通って行った。

「……ん…」

 互いに触れている部分はとても熱く(とろ)けてしまいそうだ。上手く呼吸が出来ず、次第に息が上がる。

「スズラン…」

「ふ……っ…ぁ」

 一旦離れた唇は角度を変え再度吸い寄せられた。口内を探られ、絡め取られ、舌の動きに追いつこうと必死になるも全身の力が抜けていく。
 このまま溶けて消えてしまいそう───。
 酸欠気味の頭でそんな事を考えた。