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夜の帳がおり、煌めき始める城下の街。
華やかな飾りや、南瓜で作られたランタンが妖美な光を放ち普段の街とは別の顔を見せていた。
「───スズラン」
多くの祭り客で賑わう喧騒の中、愛しい声が名前を囁いた。
「……ごめんなさい突然泣いたりして」
「相変わらずの泣き虫。大丈夫だよ、ほら。そろそろ戻ろうか」
「うん」
声の主はスズランを抱きしめて髪や背中を優しく撫でて宥めてくれた。
そうだ。つい泣いてしまったのだ。先程まで楽しくお喋りを楽しんでいたのに。せっかくライアが街へと連れ出してくれたのに。
とある迷子の女の子がとても可愛かった。涙を両瞳いっぱいにためて、不安げにしている姿をいつかの自分自身と重ねたつもりはなかった。それなのに、羨ましいと思ったのだ。
人の群れを掻き分けて我が子を探しに来た母親の姿と、再会した時に見せた女の子の弾ける笑顔を見た瞬間。どうしようもなく羨ましいと思った……。
優しい腕の中でその気持ちをぎゅっと押し込める。するともう一度強く抱きしめられ、同時に極小さな声が耳に届くが今度は上手く聞き取れなかった。
「んん…、ライアっ…今なんて言ったの?」
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夜の帳がおり、煌めき始める城下の街。
華やかな飾りや、南瓜で作られたランタンが妖美な光を放ち普段の街とは別の顔を見せていた。
「───スズラン」
多くの祭り客で賑わう喧騒の中、愛しい声が名前を囁いた。
「……ごめんなさい突然泣いたりして」
「相変わらずの泣き虫。大丈夫だよ、ほら。そろそろ戻ろうか」
「うん」
声の主はスズランを抱きしめて髪や背中を優しく撫でて宥めてくれた。
そうだ。つい泣いてしまったのだ。先程まで楽しくお喋りを楽しんでいたのに。せっかくライアが街へと連れ出してくれたのに。
とある迷子の女の子がとても可愛かった。涙を両瞳いっぱいにためて、不安げにしている姿をいつかの自分自身と重ねたつもりはなかった。それなのに、羨ましいと思ったのだ。
人の群れを掻き分けて我が子を探しに来た母親の姿と、再会した時に見せた女の子の弾ける笑顔を見た瞬間。どうしようもなく羨ましいと思った……。
優しい腕の中でその気持ちをぎゅっと押し込める。するともう一度強く抱きしめられ、同時に極小さな声が耳に届くが今度は上手く聞き取れなかった。
「んん…、ライアっ…今なんて言ったの?」



