「マスター、いつもすまないな」
「とんでもございません! 何を仰いますか、アーサ様にはどれだけ感謝してもしきれません。本当に…」
ラインアーサが椅子に腰を下ろすと、ユージーンは淹れたての珈琲を差し出しながらぽつぽつと近況を告げ出す。
長く深い眠りに着いているスズランだが、ごく稀に僅かな時間目を覚ます事もあるらしい。だがその瞳に虹色の輝きは無く、無色透明な硝子玉は何も映していないのだと言う。
「……そうなのか」
「ええ…。我々を見ても何の反応も。すぐまた眠りに着いてしまうのです」
話を聞き入れながら湯気のたつ真っ黒な珈琲を一口含んだ。ほろ苦さが睡眠の足りない脳に刺激を与える。
「でも、今日はだいぶ顔色が良かったよ。手もずっと握っているとあたたかくなるんだ」
「っ…アーサ様。どうかご無理だけはなさらずに。……お辛いかと存じますが、もう全て我々に一任して頂いても。もしこのままスズが…」
「嫌だ」
ラインアーサは遮る様に声を張った。それ以降の言葉を聞きたくなかったのだ。
「しかし…」
「マスター、俺は絶対に諦めない。スズランが目を覚ますまで絶対に」
「ですが、そうでなくても貴方様はご多忙な御身で…」
「とんでもございません! 何を仰いますか、アーサ様にはどれだけ感謝してもしきれません。本当に…」
ラインアーサが椅子に腰を下ろすと、ユージーンは淹れたての珈琲を差し出しながらぽつぽつと近況を告げ出す。
長く深い眠りに着いているスズランだが、ごく稀に僅かな時間目を覚ます事もあるらしい。だがその瞳に虹色の輝きは無く、無色透明な硝子玉は何も映していないのだと言う。
「……そうなのか」
「ええ…。我々を見ても何の反応も。すぐまた眠りに着いてしまうのです」
話を聞き入れながら湯気のたつ真っ黒な珈琲を一口含んだ。ほろ苦さが睡眠の足りない脳に刺激を与える。
「でも、今日はだいぶ顔色が良かったよ。手もずっと握っているとあたたかくなるんだ」
「っ…アーサ様。どうかご無理だけはなさらずに。……お辛いかと存じますが、もう全て我々に一任して頂いても。もしこのままスズが…」
「嫌だ」
ラインアーサは遮る様に声を張った。それ以降の言葉を聞きたくなかったのだ。
「しかし…」
「マスター、俺は絶対に諦めない。スズランが目を覚ますまで絶対に」
「ですが、そうでなくても貴方様はご多忙な御身で…」