《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「もちろん! スズランに来て欲しいんだ」

 後ろ髪を下ろしており、いつもより落ち着いた雰囲気だ。見慣れない姿にどきりと胸が高鳴る。
 イリアーナがたくさんの焼き菓子を焼いたので誕生パーティを開く事になり、更にはスズランの紹介も兼ねているのだとか。イリアーナと言えばこの国の王女だが、それ以前にライアの姉である。緊張と嬉しさにスズランの心は浮き立った。だがすぐに思い直す。本日は 収穫祭(フェスト)。店が混み合うのは分かりきっている。

「しょ、紹介ってその……あ、でも今日は収穫祭(フェスト)でお店がすごく忙しいからマスターに聞いてみないと」

 そう伝えた途端、ライアはしょげた子犬の如く眉を下げた。

「そう、だよな…。ここは人気の店だし。仕事で忙しいなら仕方ないよ」

「ライア、お誕生日おめでとう」

 スズランは普段の感謝も込めて、心から祝いの言葉を伝えた。

「ありがとうスズラン」

「誘ってくれたのに。お祝いに行けなかったらごめんなさい」

「ん、いいよ。後で焼き菓子を届けに来るよ。じゃあまた……」

 自然と絡み合う視線。ライアの指がスズランの髪をさらさらと撫でる。なんて優しく触れるのだろう。指先から想いが伝わり、スズランの胸は切なく締め付けられた。