「っ…うん!」
「それと……もし、名乗る時があったら〝 スズラン・フルール〟と。そう正しく名乗ると良い…」
「……フルール…?」
ユージーンの申し出が嬉しかった。本当はとても寂しかったのだ。そして何やら聞き慣れない姓を知らされ、はじめて口にしたのに耳に馴染んで懐かしく感じた。
「間違いなく、スズの正統な姓だよ」
「そうなんだ。ありがとうマスター」
先程からずっと寂しげに眉を下げるユージーンを見ているとどうしようもなく心苦しい。
互いの煮え切らない態度に痺れを切らしたのかセィシェルが突然スズランの腕を取った。
「なあ、そこの赤髪のおっさん。何か急いでんだろ? 仕方ねえな、俺。送ってくから!」
「セィシェル…」
「ふふ、御協力感謝致します。セィシェル君」
「ちっ、別にあんたの言う協力ってやつじゃあねえし!」
セィシェルはスズランの手首を掴んだまま裏庭へ出ると、早歩きで王宮に続く森へと入って行く。その後ろをコルトが滞りなく着いてくる。
森の空気はとても澄んでいた。斜に差し込む美しい木漏れ日を楽しむでもなく三人は無言のまま歩を進める。小鳥たちの囀りも耳に入らず、さくさくと草を踏む音だけが響く。
「それと……もし、名乗る時があったら〝 スズラン・フルール〟と。そう正しく名乗ると良い…」
「……フルール…?」
ユージーンの申し出が嬉しかった。本当はとても寂しかったのだ。そして何やら聞き慣れない姓を知らされ、はじめて口にしたのに耳に馴染んで懐かしく感じた。
「間違いなく、スズの正統な姓だよ」
「そうなんだ。ありがとうマスター」
先程からずっと寂しげに眉を下げるユージーンを見ているとどうしようもなく心苦しい。
互いの煮え切らない態度に痺れを切らしたのかセィシェルが突然スズランの腕を取った。
「なあ、そこの赤髪のおっさん。何か急いでんだろ? 仕方ねえな、俺。送ってくから!」
「セィシェル…」
「ふふ、御協力感謝致します。セィシェル君」
「ちっ、別にあんたの言う協力ってやつじゃあねえし!」
セィシェルはスズランの手首を掴んだまま裏庭へ出ると、早歩きで王宮に続く森へと入って行く。その後ろをコルトが滞りなく着いてくる。
森の空気はとても澄んでいた。斜に差し込む美しい木漏れ日を楽しむでもなく三人は無言のまま歩を進める。小鳥たちの囀りも耳に入らず、さくさくと草を踏む音だけが響く。



