《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

 この上ない至福を堪能し満足した後、起こしてしまわぬようにベッドから抜け出るつもりが、それは叶わなかった。

「もう起きるの…?」

 少し甘えた囁きと同時に背中から伸びてきた腕に捕まる。

「っ…ライア! 起こしちゃった?」

「んー・・・」

 まだだいぶ眠たそうな声だが、長い腕はスズランを離そうとしないどころかきつく絡みつく。

「も、もうそろそろ起きないと…」

「……さっき眠ったばかりなのに」

 確かに二人が共に微睡んだのは明け方近くだ。

「でも」

「身体、大丈夫? どこか痛かったりしたら教えて」

 そう言われて初めて身体中に残る気だるさを認識する。だが動けないほど酷いという訳でもない。

「へいき……ぁ…っ、んん…」

 言いかけた次の瞬間、全身に甘い痺れが駆け巡った。ラインアーサの癒しの風だ。
 彼は〝風の息吹(アイレ・アリェント)〟を使った癒しの煌像術(ルキュアス)が得意なのだ。甘い痺れと共に身体の不調等が消し飛ぶ。

「たくさん無理させたから、念の為」

「平気なのに……」

 毎回思う。得意だからと言って頻繁に力を使い過ぎではないかと。
 それにどうしても昨晩の艶事を思い出してしまう。汗で冷えた筈の身体が再び熱を持ち始める。