《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「だ、だめ…! パパっ! お目目あけて! パパぁ…!! だれか、パパをたすけて……おねがい……パパがしんじゃう…っ」

 必死に叫んだ。
 しかしこの巨大な高架橋の袂に人気(ひとけ)はなく、しんと静まり返っている。最早、先程の少年だろうが、人買い屋でも構わない。誰でもいい。この最悪の事態を変えられるのならば今後どんなに辛い事が起きても構わない。──だから助けて。
 スズランは喉が潰れそうな程に叫び続けた。

(なんで…? どうしてだぁれもいないの? このままじゃ、ほんとうにパパがしんじゃう…っ。そんなのだめ…! ママ……どうしたらいいの? ママだったらどうやって…っ!)

 厳しくも、とても強く優しいリリィオス。
 泣き虫だがいつもスズランを励ましてくれるアスセナス。二人を想いながらはっと思い立つ。

「そうだ! おまじない…! いつもパパがしてくれる、すぐになおる…」

 怪我をした時などにアスセナスがかけてくれるおまじないを思い出した。そして見よう見まねだが同じ様にアスセナスの頬や腕、以前負った怪我の痕などに唇を寄せてその都度全身全霊で祈った。

「パパの痛いのが、なおりますように…! おねがいっ!!」