睡眠時間は勿論、食事量も十分ではなく、スズランは同年代の子供よりも小さく、痩せ細っている。アスセナスに至っては追手に負わされた怪我が未だ完治していない。
父子は確実に摩耗し、衰弱していった。アスセナスは瞳を固く閉じ、腕の中の小さなぬくもりを更に抱きしめた。
「……スズは絶対に守る…! リリィと、そう約束した…、んだ……」
しかしほんの少し気を抜いた瞬間、車体の揺れと疲れに抗えず意識を手放してしまったのだ───。
目が覚めた時には遅く、列車は王都 風樹の都を通過し、旧市街である夕凪の都へと動き出していた。
「……んん…? っ…しまった! まずい、降り損ねた…。とにかく次で一度降りよう」
車窓を覗くと丁度日没の夕陽に照らされ、燃える様に真っ赤に染まる旧市街が望めた。その光景はあまりに美し過ぎて、まるで何処か別世界に来てしまったかの様な恐ろしさを感じた。眠るスズランを抱いたまま次の停車場、夕凪の都で下車したアスセナス。
先程までの美しかった風景はすっかり影を落とした街並みへと表情を変えている。街灯も少なく街明かりも殆ど無い暗く寂しい雰囲気だ。
(真っ暗だな、まさか折り返す列車がもうないとは…。しかし歩いてでも引き返さねば)
父子は確実に摩耗し、衰弱していった。アスセナスは瞳を固く閉じ、腕の中の小さなぬくもりを更に抱きしめた。
「……スズは絶対に守る…! リリィと、そう約束した…、んだ……」
しかしほんの少し気を抜いた瞬間、車体の揺れと疲れに抗えず意識を手放してしまったのだ───。
目が覚めた時には遅く、列車は王都 風樹の都を通過し、旧市街である夕凪の都へと動き出していた。
「……んん…? っ…しまった! まずい、降り損ねた…。とにかく次で一度降りよう」
車窓を覗くと丁度日没の夕陽に照らされ、燃える様に真っ赤に染まる旧市街が望めた。その光景はあまりに美し過ぎて、まるで何処か別世界に来てしまったかの様な恐ろしさを感じた。眠るスズランを抱いたまま次の停車場、夕凪の都で下車したアスセナス。
先程までの美しかった風景はすっかり影を落とした街並みへと表情を変えている。街灯も少なく街明かりも殆ど無い暗く寂しい雰囲気だ。
(真っ暗だな、まさか折り返す列車がもうないとは…。しかし歩いてでも引き返さねば)



